お知らせ

「仙台防災枠組み2015-2030」の実施に関する要望書提出の報告

掲載日:2015/04/29

第3回国連防災世界会議が終わり、仙台防災枠組が採択されました。私たち、男女共同参画と災害・復興ネットワークは、2013年以来、ポスト兵庫行動枠組にジェンダー視点の充実、女性の参画とリーダーシップ、エンパーワメントとトレーニングの必要性などを導入するよう日本政府並びに国連に要望活動を展開してきましたが、要望の一部が盛り込まれたことは成果といえます。そこで4月22日、23日の両日、今後、仙台防災枠組に記述されたジェンダー関連事項が着実に実施されるよう、安倍内閣総理大臣を始め、関係閣僚に要望してきました。参加メンバーによる報告と要望書をお届けします。なお、近く復興庁にも要望に行く予定です。

要望書

安倍晋三 内閣総理大臣 ( 英訳

有村治子 内閣府特命担当大臣(男女共同参画担当)

山谷えり子 内閣府特命担当大臣(防災担当)

菅沼健一 特命全権大使(第3回国連防災世界会議担当兼北極担当)

岸田文雄 外務大臣

田中明彦 独立行政法人国際協力機構理事長

竹下亘 復興大臣

有村治子 内閣府特命担当大臣(男女共同参画担当)


齊藤馨内閣府政策統括官(防災担当)付参事官との面談報告

船橋 邦子

IMG_1365 4月22日11時から内閣府において齊藤内閣府政策統括官(防災担当)付参事官、小池智歌参事官補佐に堂本暁子、大野曜、村松泰子、船橋邦子が会い、安倍内閣総理大臣、山谷防災担当大臣、齊藤参事官への要望書(添付)を手渡しました。その後、1時間にわたって会談しました。

 まず、齊藤参事官が第3回国連防災世界会議において、仙台防災枠組を採択するに当って、男女共同参画の視点を導入する努力を払われたことを謝し、その労を労いました。

 齊藤参事官から要望書について次のような返答がありました。

 要望書1の、今後も引き続き日本政府がジェンダーの視点から、国際的なリーダーシップを取っていくように、については、積極的に取り組んでいきたい、その意味で、このような要望書の提出はとてもありがたい。 要望2の「災害対策基本法」の基本理念として女性の参画を盛り込むことに関しては平成24年、25年の改正で内包されており、今回、改めて改正するつもりはない、との回答でした(注)。国連のフォローアップとしては仙台防災枠組で設定された7つの主要インディケーター(防災の主流化、事前の防災投資、より良い復興、多様な主体の参画、人間中心のアプローチ、女性のリーダーシップなど)に関しては政府間のワーキンググループをつくり、各国がモニターを進めるシステムを年内に作成するとの報告があった。

 国内的には平常時からの地区防災の強化を考えており、その際、女性のリーダーシップの充実、拡大を考えている、との発言がありました。

 私達としては、女性の人権は災害リスク削減(DRR)の基本原則であり、新しく採択された仙台防災枠組においても基本原則であると受け止め、実施して欲しい、と要望しました。

(注) 原ひろ子さんからのコメント

 災害対策基本法の基本理念の項は、以下の通り。「五」にある内容を、齊藤馨氏は指しておられるのであるならば、私たちの要望が満たされていると、考えてよいのであろうか。

 「災害対策基本法」(関連部分抜粋)
(基本理念)
第二条の二   災害対策は、次に掲げる事項を基本理念として行われるものとする。
一  我が国の自然的特性に鑑み、人口、産業その他の社会経済情勢の変化を踏まえ、災害の発生を常に想定するとともに、災害が発生した場 合における被害の最小化及びその迅速な回復を図ること。
二  国、地方公共団体及びその他の公共機関の適切な役割分担及び相互の連携協力を確保するとともに、これと併せて、住民一人一人が自ら 行う防災活動及び自主 防災組織(住民の隣保協同の精神に基づく自発的な防災組織をいう。以下同じ。)その他の地域における多様な主体が自発的に行う防災活 動を促進すること。
三  災害に備えるための措置を適切に組み合わせて一体的に講ずること並びに科学的知見及び過去の災害から得られた教訓を踏まえて絶えず 改善を図ること。
四  災害の発生直後その他必要な情報を収集することが困難なときであっても、できる限り的確に災害の状況を把握し、これに基づき人材、 物資その他の必要な資源を適切に配分することにより、人の生命及び身体を最も優先して保護すること。
五  被災者による主体的な取組を阻害することのないよう配慮しつつ、被災者の年齢、性別、障害の有無その他の被災者の事情を踏まえ、そ の時期に応じて適切に被災者を援護すること。
六  災害が発生したときは、速やかに、施設の復旧及び被災者の援護を図り、災害からの復興を図ること。


武川内閣府男女共同参画局長との面談報告

大野 曜

IMG_1367 4月22日(水)午後1時30分から、武川男女共同参画局長に有村男女共同参画担当大臣と武川局長宛の要望書を提出しました。お会いしたのは、堂本暁子代表の他、村松泰子、船橋邦子、大野曜の4人でした。

 武川局長からは、地方自治体へ行くとまだまだ自治体幹部が防災への女性の参画について意識が弱いと感じた。研修内容に男女共同参画の視点を加えることが必要である。男女共同参画センターを地域の防災計画で位置付け、防災・復興計画の企画段階から女性を参画させるような働きかけが重要である。地域の課題解決の拠点施設を目指している男女共同参画センターが地域の課題として防災に取組むことが重要であり、全国女性会館協議会が、センター相互のネットワーク化を進めていることに注目している。と話されました。

 堂本代表は、内閣府が男女共同参画の視点に立った災害・復興への取組指針を策定したことなどを高く評価している、一過性で終わらないよう、今後も関連法の改正案の検討、トレーニング計画の実施などで連絡を密にしていきたい、と述べました。


菅沼大使との面談報告

堂本 暁子

IMG_13734月22日午後3時に外務省で、第3回国連防災世界会議を担当された菅沼大使に会い、外務大臣と菅沼大使への要望書を提出しました。参加したのは、大野曜、船橋邦子、堂本暁子の3人です。

 面談では、仙台で採択された「仙台防災枠組」を国内的にも、国際的にも確実に実施されることを求め、今後も引続き、防災とジェンダー領域で、日本が国際的なリーダーシップをとって欲しいこと、また、女性主要グループ(WMG)は「女性の人権とジェンダー平等は災害リスク削減(DRR)の基本原則であること」と主張しており、日本政府としてこれを支持し実現に努力して欲しい旨、要望しました。

 菅沼大使からは、総理からも女性のリーダーシップの重要性について発言があり、今後、
JICAなどで具体化していく必要がある。象徴的な意味もある。

 今後、ISDRは秋の国連総会に向けて、「仙台防災枠組」「インディケーター」などの決議を用意しなければならない。さらに2030年に向けて新しい行動指針に沿って、15年間の災害に関する国際的取組の方向性を出していくことになるが、主催国として協力していく、とのことでした。

 なお、24日付で、菅沼大使はスリランカ大使に任命されました。


田中JICA理事長との面談報告

村松 泰子

IMG_14024月23日(木)17時、二番町のJICAを訪問し、田中明彦理事長に要望書を提出しました。参加したのは堂本暁子、大野曜、船橋邦子、村松泰子の4人。JICAは山内邦弘地球環境部長、原智佐ジェンダー平等・貧困削減推進室長ほかが出席しました。

 要望は、安倍首相が発表した仙台防災協力イニシアティブの主要プロジェクトとして開始される「防災における女性のリーダーシップ推進研修」をめぐる4点です。この研修プログラムの開発に向けて、国際フォーラムを政府機関やNGO/NPOとの連携で開催することについては、明言は得られませんでした。が、検討中のJICA主催の研修の実施後に評価する事後開催、あるいは同時開催などの可能性について、意見交換しました。

 JICAが検討中の研修プログラムとしては、今年度は10月以降の2週間程度の開催を目途に、途上国からインパクトを持ちうるポジションの人20名程度を対象(うち男性4名程度)に実施を考えており、1週間程度は被災地に足を運ぶこと、参加者と日本側の双方向で学び合うことを考えているとの説明がありました。

 この研修プログラムについては、「ジェンダー」についてきちんと学ぶプログラムとすべきであると要望しました。また、海外調査については、事前に4か国のリサーチを考えているとの回答がありましたが、こちらからも海外の優れたトレーニングプログラムの存在をお伝えしました。

 「リーダーシップ推進研修」は、今後、メニューを豊富にし、5年程度実施したいとのことです。


岡本全勝復興庁事務次官との面談報告

山口 文代

201505_pic 5月1日(金)午前11時30分から、岡本全勝復興庁事務次官に要望書を提出し、竹下復興大臣宛の要望書もお渡ししました。参加したのは堂本暁子代表の他、大野曜、青木玲子、山口文代の4人です。

 面談では、はじめに堂本暁子代表から第3回国連防災世界会議において、日本が開催国として指導力を発揮され、「仙台防災枠組」に女性の参画やリーダーシップについて8か所記載されたことへの評価と、仙台防災災枠組みが国内外で着実に実施されることが不可欠であることから、要望書に基づき、実現に努力してほしいと「災害対策基本法」の基本理念として、女性の参画を盛り込むなど8点の要望事項を説明しました。

 岡本事務次官は、東日本大災害では、特に避難所の運営に女性が主体的に参加することの重要性、されに女性なくして運営ができないことが、社会全体に認知されたのではないか、要望内容については常に念頭に置き、折あるごとに働きかけていきたい、と話されました。堂本代表からDRRに関するあらゆる段階で女性の参画を実現するために、特に、地方自治体が積極的に取組むことができるよう国からの発信を期待したいと述べて面談は終了しました。


金刺義行復興庁統括官付参事官(男女共同参画担当)との面談報告

山口 文代

 5月1日(金)午後1時30分から、金刺義行復興庁統括官付参事官(男女共同参画担当)に要望書を提出し、約1時間にわたって面談しました。参加したのは堂本暁子代表の他、大野曜、青木玲子、山口文代の4人です。

 堂本代表からは仙台で採択された「仙台防災枠組」を若実に実施されるよう、要望書に基づき、事例を加えながら要望内容を説明しました。特に、安倍総理大臣が総会セッションで「仙台防災協力イニシャティブ」を発表され、「今後4年間で4万人の防災・復興リーダーを育成する」ことを示されたことについて、「第4次男女共同参画基本計画」の策定を目前に控え、国の方針としてどのように取組まれるのか、具体策があればとお聞きしましたが、明確な回答は得られませんでした。
 
 金刺参事官と同席された石原主査からは、地域を回ってみて男女共同参画に対する意識も取組みも地域で現状が異なっていることを感じた。地方自治体を巻き込みながら女性のリーダー養成や参画についても官民一体となって、やっていくには「男女共同参画」という表現を使うと敬遠されがちなので「男女一緒にやっていきましょう」と働きかけたほうがいいのではないか、と述べられた。堂本代表から地方自治体が取組みやすいように、ガイドラインを示して欲しいと要望して面談は終了しました。


有村治子内閣府特命担当大臣(男女共同参画担当)との面談報告

青木 玲子

DSCN1702 5月19日、JWNDRRのメンバー(堂本暁子、大野曜、船橋邦子、青木玲子)が、有村治子内閣府特命担当大臣(男女共同参画担当)に要望書「仙台防災枠組2015-2030」を持参し、面談しました。

 すでに内閣総理大臣をはじめ、関係各省庁に要望書を届けました。
 有村大臣には、

  1. 第4次男女共同参画基本計画」において防災・復興分野を独立させ、「仙台防災枠組2015-2030」に基づいた具体的な施策を提示すること
  2. 3月25日に開催された男女共同参画会議計画策定専門調査会で配布された素案では、男女共同参画の視点に立った防災・復興体制の確立 が独立した項目立てとなっていますが、「仙台防災枠組2015-2030」との関連では、ジェンダー統計についての言及がないので、性別・年齢別・障害の有無等のデータの必要性を追記すること
  3. 安倍総理大臣は、「ジェンダー平等と女性の能力強化を重視」し、「女性のリーダーシップを高めるための人材育成も必要である」と明言された。防災分野、復興分野に共通して、男女共同参画の視点にたった地域の防災リーダーの計画的・継続的な育成、特に男性への男女共同参画の研修が必要であることを追加し、「防災における女性のリーダーシップ推進研修」を国内外において速やかに実施すること

を要望書8項目の中から強調して要望しました。

 面談の最後に有村大臣は、政治の分野における男女共同参画が重要であり、各地の議会が参考とする同議長会の標準規則に、女性議員が出産などで議会を休むことを認める規定を設けるように議長会に要請し、産休や育休を取りやすくし、女性議員を増やすことに強い意欲を示されました。